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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)9093号 判決 1998年3月20日

原告

神野順子こと李順子

ほか二名

被告

西竹初夫

ほか一名

主文

一  被告らは原告李順子に対し、連帯して金二四一万九四二〇円及びこれに対する平成六年三月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは原告姜明美に対し、連帯して金一六一万二九四六円及びこれに対する平成六年三月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは原告姜耕一に対し、連帯して金一六一万二九四六円及びこれに対する平成六年三月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告らのその余の請求を棄却する。

五  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告らの、その余を被告らの負担とする。

六  この判決は、第一項ないし第三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは原告李順子に対し、連帯して金五六三万円及びこれに対する平成六年三月一五日(事故日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは原告姜明美に対し、連帯して金三七六万円及びこれに対する平成六年三月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは原告姜耕一に対し、連帯して金三七六万円及びこれに対する平成六年三月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原動機付自転車に乗車中、駐車車両に衝突し、死亡した姜健次(以下単に「健次」という)の相続人である原告らが、右車両の運転手である被告西竹初夫(以下「被告西竹」という)に対し民法七〇九条、保有者である被告株式会社椎原工務店(以下「被告会社」という)に対しては自動車損害賠償保障法三条及び民法七一五条に基づいて、損害の賠償を求めた事案(内金請求)である。

一  争いのない事実及び争点判断の前提事実(以下( )内は認定に供した主たる証拠を示す)

1  事故の発生(争いがない)

(一) 日時 平成六年三月一五日午前〇時二〇分頃

(二) 場所 大阪府茨木市美沢町六番一号先路上(大阪中央環状線)

(三) 関係車両 普通貨物自動車(滋賀一一そ一七〇二号、以下「被告車」という)

健次運転の原動機付自転車(大阪市東淀ち九八一六号、以下「原告車」という)

(四) 事故態様 被告西竹は、同月一四日午後四時半ころから、駐車禁止の規制がなされている(一)の場所に、尾灯を点けずに被告車を駐車していたところ、原告車が被告車に追突した。

2  健次の死亡(争いがない)

健次は、本件事故によって傷害を負い、死亡した。

3  原告らの地位(甲一の1ないし4、韓国民法一〇〇九条)

原告李順子(以下「原告順子」という)は健次の妻、原告姜明美及び原告姜耕一(以下それぞれ「原告明美」「原告耕一」という)は健次の子であり、その法定相続分はそれぞれ七分の三、七分の二、七分の二である。

4  被告会社の責任原因(甲四)

被告会社は被告車の保有者である。

5  損害の填補(争いがない)

原告らは自賠責保険金二一〇〇万円を受取っている。

二  争点

1  相当因果関係、過失相殺

(原告らの主張の要旨)

本件事故現場は、駐車禁止の規制がなされている幹線道路であることを考えると被告西竹の過失は重大であり、本件事故は被告西竹にその大半の責任がある。

(被告らの主張の要旨)

本件事故現場は見通しも良好であり、被告車の駐車と本件事故との間には相当因果関係が存しない。

仮に右主張が認められなかったとしても、大幅な過失相殺がなされるべきである。

2  損害額全般

(原告らの主張)

(一) 逸失利益 三八五七万八二八六円

計算式 五〇一万九二九三円×(一-〇・三)×一〇・九八=三八五七万八二八六円

(二) 死亡慰藉料 二六〇〇万円

(三) 葬儀費用 一二〇万円

(四) 原告車物損 一〇万円

(一)ないし(四)の合計六五八七万八二八六円から損害填補額二一〇〇万円を差し引いた四四八七万八二八六円及び(五)相当弁護士費用四四八万七八二八円の総計四九三六万六一一四円につき、各原告の相続分を乗じると原告順子について二一一五万六九〇六円、原告明美、原告耕一について一四一〇万四六〇四円となり、原告順子については内金請求として金五六三万円及びこれに対する本件事故日から支払い済みまでの遅延損害金を、原告明美及び原告耕一については三七六万円及びこれに対する本件事故日から支払い済みまでの遅延損害金の各支払いを求める。

第三争点に対する判断

一  争点1(相当因果関係、過失相殺)について

1  認定事実

証拠(甲四、六、七、一〇、一一、原告順子本人、原告耕一本人)及び前記争いのない事実を総合すると次の各事実を認めることができる。

(一) 本件事故現場は、別紙図面Ⅰのとおり、南行き三車線で第一車線(歩道側から数える)の幅員が約四メートル(以下のメートル表示はいずれも約である)、第二車線の幅員が三・四メートル、第三車線の幅員が三・三メートルで、第一車線と第二車線の間にはゼブラゾーンが存し、東端に歩道のある市街地を南北に延びるほぼ直線の道路であり、最高制限速度は時速六〇キロメートルで、終日駐車禁止の規制がなされている。車道部分はアスファルト舖装され、平坦で、事故当時、路面は乾燥していた。現場付近は、別紙図面に示す位置に水銀灯があったが、他面、エッソガソリンスタンドが閉店していたために、夜間としては普通の明るさであった。また、第一車線を南進してくる車両からの前方の見通しは良好であった。

右道路は別紙図面Ⅱに示されるように、大阪環状線の南行き車線を構成しており、第一車線は平地を延び、第二車線及び第三車線は高架から降りてきた車両が走行しており、その通行量は事故当日午前〇時五五分ころから行われた実況見分時において三車線合わせて五分間で約五〇台であった。

(二) 被告西竹は、事故前日の午後四時三〇分ころ、エッソのガソリンスタンドの駐車場に被告車を駐車しようとしたところ、営業中であったため、別紙図面Ⅰ<ア>点(以下符号だけで示す)に、尾灯を点灯せずに被告車を駐車させた。被告車の車幅は二・二六メートル、車高は三・一二メートル、長さは八・四二メートルである。

(三) 他方健次は、前記第一車線を南進していたが、×付近で被告車後部に原告車前部を衝突させた。

2  判断

1の各認定事実に照らし考えるに、被告西竹は、現場が交通頻繁な幹線道路であったのであるから、後続車に自車の視認が容易となるような警告措置をなすべきであるのにこれを怠り、駐車禁止場所に被告車を駐車させた過失が認められる。前記に認定した被告車の停車態様、位置、駐車時間、道路状況から見ると、右駐車は通行に関する危険性を増大させたと言うことができ、右結果として本件事故が発生したものであるから、本件事故発生と駐車行為との間に相当因果関係が肯定できるので、被告西竹は民法七〇九条の責任を負わなければならない。

また被告会社には、同車を自己の運行の用に供していたときの事故であるから、自動車損害賠償保障法三条の責任が存する。

しかしながら他方、道路の見通し状況からすると、本件事故は健次が前方の注視さえ怠らなければ避けることができたものであり、その過失も軽視できないものである。右過失の内容を対比し、前記認定の各事実、特に見通し状況は良好であった反面、被告車は第一車線と高架からの第二車線、第三車線の合流点付近に、第一車線の半分以上を塞ぐ形で長時間に亘り駐車されていたこと等の事情を考慮すると、その過失割合は被告西竹が四に対し、健次が六とするのが相当である。

二  争点2(損害額全般)について(本項以下の計算はいずれも円未満切捨)

1  逸失利益 三八五七万八二八六円

(主張同額)

証拠(甲一の1ないし4、八の1ないし120、原告順子本人)によれば、健次(昭和一六年七月三〇日生、当時五二歳)は、従業員二名を使って理髪店を営んでいたこと、事故前五か月間の売上は五〇〇万円を超えていたこと、当時原告順子はスナックを経営していたもののその収入は一か月二〇万円余りに過ぎなかったこと、原告明美は無職であり、原告耕一は高校生であって、一家の生活は主として健次の収入によって支えられていたことが認められる。理髪店の経費の詳細は不明ではあるものの、右に見た店の規模、売上高と平成六年度賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計、男子労働者五〇歳から五四歳までの平均年収が七二一万四六〇〇円に及ぶこと、一家の生活状況を併せ考えると、健次は原告ら主張の五〇一万九二九三円程度の年収を得ていたことが推認できる。

そこで、右年収を基礎とし、その生活費割合を三割、就労可能年齢を六七歳とみてホフマン方式により中間利息を控除して逸失利益を算定すると原告主張額に達する。

計算式 五〇一万九二九三円×(一-〇・三)×一〇・九八一=三八五八万一七九九円

2  死亡慰藉料 二五〇〇万円

(主張二六〇〇万円)

健次が一家の支柱であること、本件事故態様等本件審理に顕れた一切の事情を考慮して右金額が相当であると認める。

3  葬儀費用 一二〇万円

(主張同額)

本件事故と相当因果関係がある葬儀費用は一二〇万円とするのが相当である。

4  物損 八万五〇〇〇円

(主張一〇万円)

証拠(甲九)及び弁論の全趣旨によれば、原告車は本件事故によって修理不能の損傷を受けたこと、その時価は八万五〇〇〇円であったことが認められる。

第四賠償額の算定

一  損害総額

第三の二の1ないし4の合計は六四八六万三二八六円である。

二  過失相殺

一の金額に前記被告西竹の過失割合四割を乗じると、二五九四万五三一四円となる。

三  損害の填補

二の金額から前記第二の一の5の損害填補額二一〇〇万円を差し引くと四九四万五三一四円となる(但し、物損額からは差し引かない)。

四  原告順子の賠償額

1  三の金額に同原告の相続分である七分の三を乗じると、二一一万九四二〇円となる。

2  1の金額、事案の難易、請求額その他諸般の事情を考慮して、同原告が訴訟代理人に支払うべき弁護士費用のうち本件事故と相当因果関係があるとして被告らが負担すべき金額は三〇万円と認められる。

3  よって、原告順子の請求は、1、2の合計二四一万九四二〇円及びこれに対する本件事故日である平成六年三月一五日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

五  原告明美及び原告耕一の賠償額

1  三の金額に同原告らの相続分である七分の二を乗じると、一四一万二九四六円となる。

2  1の金額、事案の難易、請求額その他諸般の事情を考慮して、同原告が訴訟代理人に支払うべき弁護士費用のうち本件事故と相当因果関係があるとして被告らが負担すべき金額は二〇万円と認められる。

3  よって、右原告らの請求は、1、2の合計一六一万二九四六円及びこれに対する本件事故日である平成六年三月一五日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 樋口英明)

図面Ⅰ 交通事故現場の概況(三)現場見取図

図面Ⅱ〔略〕

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